夢幻の騎士と片翼の王女
「なぜ、私のことを想って下さるのです?」

「……それは俺にもわからない。
だけど…初めて会った時から、おまえのことが頭から離れなかった。
心が酷くざわめいたんだ。
今まで数え切れない程の女を抱き、女なんてただの暇つぶしの相手だと思っていたのに、おまえは違ったんだ。」



うぬぼれかもしれないけど、やはりリュシアン様は嘘を吐いてるようには思えなかった。



それに…



その感情は私も同じ。
リュシアン様に初めて会った時…心が酷くざわめいた。
それは、一目惚れなんて軽い言葉とは明らかに違うものだった。
今までに感じたことのないような…とても深い感情で……



でも、それを言うのは良くないことのような気がして、言うことは出来なかった。



だって、私はリュシアン様の想いに応えることは出来ないんだもの。
壺の代金の代わりに、アドルフ様の側室になることを承諾してしまったんだもの…



「ごめんなさい…!」



私はその場から駆けだした。
その場にいたら、私は言ってはいけないことを言ってしまいそうだったから。



やっぱり、リュシアン様に会ったのは間違いだった。
余計に苦しくなってしまった。
部屋まで駆け続ける間中、涙が込み上げて止まらなかった。
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