夢幻の騎士と片翼の王女




「まぁ、なんて素晴らしい。」

森を抜けると、青く澄んだ湖が姿を現した。
森の木々を湖面に映し、涼やかな風が吹き抜けていく。



「良いところだろう?
城からもそれほど離れていないし、町にも近い。
静かで環境の良い所だと思うが…」

「はい、私もそう思います。」



リュシアン様のことがあって、昨夜は一睡も出来なかった。
だけど、昨日言われていた通り、私達は朝早くに馬車に乗り、私のための屋敷を建てる場所を探す旅に出た。
馬車の中では少しうとうとしてしまったけれど、ここの新鮮な空気のせいか、今はしゃっきりと目が覚めた。




(気分を切り替えなきゃ…!
リュシアン様のことを考えるのはやめよう…)



きっと、今夜、私はアドルフ様に抱かれる…そしたら、リュシアン様のことで心をかき乱されることもなくなると思う。



「まだ他の候補もあるからすぐには決めなくて構わない。」

「はい。」



湖のほとりで少し遅い昼食を済ませ、それから今夜泊まる別荘へ向かった。
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