夢幻の騎士と片翼の王女
別荘には夕方着いた。
夕食を済ませ、食後のお茶を飲んでると、急に眠くなって来た。
ほとんど眠れないまま、馬車に長時間揺られたせいだと思う。
馬車って乗り物はけっこう揺れるから、意外と体力を消耗するような気がする。
車輪も木だし、道もアスファルトじゃないから、揺れるのも当然か…
私は込み上げて来たあくびを懸命に噛み殺した。



「アリシア、今日は疲れただろう。
早めに休んだ方が良いな。」

「えっ…?」



もしかして、今のあくび…気付かれた?
それに、まさかとは思うけど…今の口調じゃ、今夜も私に手を出されないおつもり…?
そんなの困る。
早く抱いてもらわないと、リュシアン様のことが…



「い、いえ、私は疲れてなどいません。」

「……無理をするな。
ゆったりと湯浴みをして、そのまま眠ると良い。」



やっぱり…!
アドルフ様は私のことを気遣って、今夜は何もしないおつもりなんだ。



それはありがたいようでいて、その実、辛いことだ。



……って、リュシアン様を忘れるために、早くアドルフ様に抱かれたいなんて、自分勝手な気持ちかもしれないけど…



でも、そうしないと本当に辛くてたまらないから。
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