夢幻の騎士と片翼の王女
時は流れて…(side 亜里沙)




「そうなんです。
おかしいでしょう?」

「まったくだ。」



あれから約一年の歳月が流れた。
最近では、アドルフ様と緊張せずに話せるようになった。
今なら、好意を感じてる…と、はっきりと言える。



私のお屋敷も完成した。
お城から、馬車で半日程の…そう最初に見た美しい湖の傍に。
私と、メアリーさんとアンナさん、その他数名の使用人が暮らすだけにしてはもったいなさすぎる程の大豪邸だ。



少し前に、ジゼル様は男の子をご出産された。
アドルフ様もさぞお喜びのことだろうと思ってたんだけど、ジゼル様同様、子供にも愛情はないとおっしゃられてちょっとショックだった。
もしかしたら、私の手前そんな風におっしゃられただけなのかもしれないと思ったけど、アドルフ様は私の屋敷に入りびたりで、よほどのことがないとお城には帰られない。
ご公務に支障は出ていないのかと、私はそのことを心配しながらも、特に何も出来ないでいた。



「ニコラ王子はお元気ですか?」

「あぁ、そのようだ。」

「アドルフ様…ニコラ王子はあなたの実のお子さんでしょう?
気にならないのですか?」

「以前も言ったはずだ。
私はジゼルに対しても、その息子に対しても何の関心も愛情もない。
私が愛しているのは、アリシア…おまえだけだ。」

「またそのようなことを…」



あれ以来、アドルフ様と私はまだ結ばれてはいない。
ただ…口づけを交わすようにはなった。
そのままもっと先進んでも良いと思うことは何度もあったけど、アドルフ様はその度に言われた。



「私はおまえの心がほしいのだ」と。



そこで、私の気持ちにはいつも迷いが生じた。
それは、リュシアン様のこと。
私は、アドルフ様のことを好きになってるし、側室だからとかそういうことではなく、自然に結ばれたいと思ってる…でも、リュシアン様のことを完全に忘れたかというと、残念ながらそうではない。
もちろん、リュシアン様と結ばれることなんて、絶対にないって思ってる。
なのに、リュシアン様への想いは、やはり心のどこかにあって…
アドルフ様は、まるでそのことに気付かれてるかのように、いつもストップをかけられる。
本当にすごく理性の強い方だと思う。
その場の雰囲気になんて流される人じゃない。
私が、心底、アドルフ様を…アドルフ様だけを愛するようになるまで、きっと私達は結ばれないんだ…
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