夢幻の騎士と片翼の王女




「おや?アリシア、どうかしたのか?
思い出し笑いなどして…」

「えっ!?い、いやですわ。
私は笑ってなどいません。」

夕食の席で、陛下にそんなことを言われてしまい、私は焦って打ち消しました。
でも、本当はきっと笑っていたのでしょう。
その時、私は昼間に会ったリチャードのことを考えていたのですから。



「お父様…あの…今日、リチャードが……」

「おまえも会ったのか…
いつの間にかあんなに立派になって…」

「ジョシュアも生きていれば、もう23歳…立派な青年なのですね…」

お母様はそう言って、瞳を潤ませました。



ジョシュアというのは、私のお兄様です。
私より7歳年上で…15歳の時に、落馬が原因で若くしてこの世を去ってしまいました。
リチャードはお兄様と同じ年で、お父様の側近のオズワルドさんの息子さんです。
子供の頃は、三人でよく遊んだものです。
そう…リチャードは私にとって、もう一人のお兄様のような存在でした。
ジョシュア兄様が亡くなってしばらくして、リチャードは遠くの町の兵学校へ進んだと聞きました。
それからは会うこともなく、気が付けば長い年月が過ぎていました。
私の記憶の中のリチャードは、まだ少年でした。
身長はそれなりにありましたが、ひょろりとした印象で、顔つきもまだあどけないものでした。
それが、今日会ったリチャードは、体つきもとても逞しくなり、顔にも精悍さが加わっていました。
ただ、笑顔だけは当時を思い起こさせるものでしたが…
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