夢幻の騎士と片翼の王女

信頼（side 亜里沙）

（どうして…？）



リュシアン様はどうして私にこれほど優しくして下さるんだろう？



アドルフ様が亡くなってから…私は、おかしくなっていた。
自分の感情がコントロール出来ず、泣いたり喚いたり怒ったり…やりたい放題にあたり散らかした。
それなのに、リュシアン様はそのことを咎めたりせず、何もかもすべてを受け止めて下さった。
そのことが余計に腹立たしく感じたこともあった。
どうして、怒らないのか…どうして、そんな私に愛想を尽かさないのか…
私にはまるで分からなかった。



一時期の私はただ死ぬことだけを考えていた。
アドルフ様が亡くなったのは…いえ、アドルフ様だけじゃない。ジゼル様もだ。
お二人を死に追いやったのは私なんだもの…
そんな私がのうのうと生きてるわけにはいかない。
だから、死にたいと思った…
死にたいと願う反面、私は死が恐ろしかった。
どうすれば、苦しまずに楽に死ねるのか…
そんなことばかり考えていたら、眠ることが出来なくなった。
食べることも出来なくて、もしかしたら、私はこのまま死ぬのかもしれないと思った。
それは安堵でもあり、不安でもあって、私はますます心をかき乱された。


でも、そんな時…リュシアン様はずっと私の傍にいて、私を抱き締めて下さった…



リュシアン様の温もりが、私を死の淵から救ってくれたんだと思う。



リュシアン様がいて下さらなかったら…私は今、ここにはいなかったのかもしれない。