夢幻の騎士と片翼の王女
すっかり忘れていた記憶が、堰を切ったように溢れ出した。



そう…あれは、まだ俺が5つか6つの頃だったと思う。



場所は確か、どこかの別荘だったと思う。
俺は、別荘の近くの森で偶然小さな箱をみつけた。



俺は王子だったから、欲しいものはなんだって手に入った。
だけど、自分でみつけたものはやはり違う。
その箱は、俺にとって、とても価値のあるものだったんだ。



その箱は、振るとからからと音がした。
つまり中に何かが入っているということだ。
だが、不思議なことにその箱には蓋がなかった。



そこらの石で叩いたりもしてみたが、箱はびくともしなかった。



きっと、その中にはすごいお宝が入ってるんだと、子供だった俺は想像して胸を弾ませた。



そうだ…あの時、俺はその箱を城に持って帰った。
もちろん、箱のことは誰にも言わなかった。
大人に聞けば、箱の開け方はわかるかもしれない。
でも、それは何としても俺が自分で開けたかったんだ。



それから…どうした…?
俺は、霞んだ記憶を再び呼び戻した。



……そうだ!
俺は、城を抜け出し、あの箱を埋めたんだ!
大人になったら、きっと俺にも開けることが出来るはず。
それまで、誰かに取られないようにって、俺はあの箱を…!!



「カイヤ、いろいろとありがとう!
チャールズ…カイヤに褒美を頼んだ。ケチるんじゃないぞ!」

「あ、リュシアン様、どちらへ!?」



俺は返事もせずに、部屋から駆け出した。
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