夢幻の騎士と片翼の王女

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「アドルフさま…国王がお呼びです。」

「わかった、すぐに行く。」



なんとなく、いやな予感がした。
しかし、国王の命令は絶対だ。
とにかく、行ってみるしかなかった。



「陛下…お待たせいたしました。」

そこには、私の父である国王と王妃がいた。



「アドルフ…以前から言っている縁談の話なのだが…
ランジャール王国のジゼル姫に決めるが…良いな？」

「……はい。」



やはり思った通りだ。
それは、私にとっては死刑宣告のような話だった。
いやだが、そんな本心を言えるはずなどない。



ランジャール王国は、ユーロジアとは比べ物にならない程の大国だ。
しかも、資源の豊かな国だ。
私とジゼル姫が結婚したら、ユーロジアは強大な後ろ盾を得ることになる。
国王がこの縁談を断るはずがない。
なんでも、ジゼル姫は舞踏会の時に私を見染めたらしい。
私より５歳年上で、器量はあまり良いとは言えない。
だが、そんなことはどうでも良い。
どんなに美しかろうが、私はアリシア以外の女を愛することは出来ないのだから。



「アドルフ…おめでとう。」

「ありがとうございます。」

私は無理に作り笑いを浮かべた。



本当に皮肉なものだ。
アリシアのいた時代で、私が魔導士ではなく王子だったなら…私とアリシアが結ばれるチャンスもあっただろう。
あの時は、王族を酷く妬んだものだ。
だが、今頃王子として生まれても、アリシアがいないのでは何の意味もない。



（ツイてない…私は、本当に運に見放されている。）