夢幻の騎士と片翼の王女
侍女として…(side 亜里沙)




「わぁ……」

鏡に映った自分の姿に、私は思わず声を上げてしまった。
まるでコスプレみたいな綺麗なドレスを身にまとった私は、自分で言うのもなんだけど、普段の十倍くらいは可愛く見えた。
コルセットみたいなもので身体をきつく締めあげられた時は死ぬかと思ったけど、そのおかげでスタイルもすっごく良く見える。
裾まであるふんわりとしたドレスは、シルクっぽい生地で作られてて、さらさらしててしなやかでとても肌触りが良い。
ここへ来てからずいぶんと伸びた髪は、素敵に結い上げられ、ロリータっぽいヘッドドレスみたいなものを付けてもらった。
首にはきらきら輝く大きな石のついたネックレス。
これって本物だよね??
お化粧もしてもらった。
けっこう派手なメイクだからちょっと気恥ずかしい。



「良く似合っているぞ。
これなら、リュシアン様も絶対に気に入られる!」

ピエールさんはそう言って、満足そうに微笑まれた。
でも、ピエールさんとは逆に、私の気分は急激に落ち込んだ。



だって、この素敵な服装や髪型は、「侍女」という名の「娼婦」のためのものだってことに気付いたから…



「……亜里沙、どうかしたのか?」

「い、いえ…なんでもありません。」

私は、とっさに作り笑顔を浮かべた。



この数日間、悩みに悩んだ…
ジェームスさんや神父さんはそんなことしちゃだめだって、引き留めてくれたけど…
今更、そんなことをしたら、ピエール様は気分を害されるだろうし、壺の莫大な代金を払わなくてはならなくなると思う。
そしたら、当然、ジェームスさんには迷惑をかけてしまう。
でも、怖いのは怖い…
考え過ぎて、どうしたら良いのかわからなくなって泣いた日もあったけど、やっぱり私はお城に行くことを決めた。



(私がやらかした失敗は、私が償わないとね…)



ここまで来たら、もう後戻りは出来ない。
私は、今から馬車に乗り、マンシェル城へ向かう…



(命を落とすよりはましよ…)

私は、自分に言い聞かせた。
昔だったら、きっと、死んでお詫びするしかないくらい、大きな罪を犯したんだから…
それに比べたら…そう…どんなことだって乗り越えられるはず。



「じゃあ、出発いたします。」

がたがたと揺れながら、馬車は走り始めた。
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