夢幻の騎士と片翼の王女
(す…すごい……)


ピエール様のお屋敷に行った時、すごいなって思ったけど、さすがにお城はそれとは比べ物にならない。
こんなところでかくれんぼなんかしたら、一生みつからないんじゃないかなって思える。
追いかけっこしたら絶対に疲れるとか、この広さだったらバレーボールやテニスだって出来るとか、馬鹿馬鹿しいことばかりが頭に浮かんだ。



私はこれから大変なことをするっていうのに、なんとものんきというか…
そうだよ…私はここで日本では犯罪になるようなことをするんだよ。



大丈夫なのかな…
女好きってことは、きっとリュシアン様はテクニシャンなんだろうし…
私みたいな経験0の女じゃ、きっと満足させられないよね。
でも…それですぐにお払い箱になったら、それは私にとってはすごくラッキーなことだよね。
そうそう…ものは考えよう…なんでも良い方に取れば良いんだ。



それにしても、なんだかみんなすごく忙しそう。
さっきから何人すれ違ったことか…
大きな荷物を持った人や、早足で駆け抜ける人…
お城ってそんなに忙しいものなのかな?



「こちらでございます。」



私達の前を歩いていた侍女っぽい人が、大きな扉の前で止まってそう言った。
ついに、リュシアン様とのご対面だ。
さっきまでののんきさはどこへやら…
急に緊張感がみなぎり、足ががくがくして、口の中がからからになって来た。
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