ヴァージンの不埒な欲望

その人の目を見て両手の拳を強く握りながら、きっぱりと言った。

その人は一瞬目を丸くしたが、すぐに顎をクッと引き上目遣いで私を見た。

「『優しい』ですか。初めての時は、やっぱり優しくされたいんですね。名前も知らない相手にお願いをして“初体験”をしようというのに。そんな甘い考えで大丈夫ですか?ちゃんと最後まで、その行為ができるんですか?」

唇の片端を上げて、フッと挑発的な笑みを浮かべた。初めて見るその人のそんな表情にも、ゾクッと痺れた。

「自慢じゃないけど、知識だけはたっぷりあります。この年で、キスさえも未経験なので完璧な耳年増ですが」

私は目を逸らさずに、その人を見つめ続けた。その人も、ジッと私を見つめる。

「私は、まだヴァージンだけど。ヴァージンにだって、ちゃんと欲望はありますっ!」

テーブルに両手拳をグッと押し付け、身を乗り出してその人を睨み付けた。

その人のきれいな瞳が飛び出してしまいそうな程、大きく見開かれていた。少しすると、右手で両方の目元を覆った。

フゥーと息を吐いた後、右手を下ろし背筋を伸ばして、その人は私を見た。

身を乗り出した態勢で睨み付けていた私も、身体を起こして背筋を伸ばした。両手を膝の上に揃えて置き、その人を見つめる。

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