ヴァージンの不埒な欲望

「言っている事も、やっている事もメチャクチャですが、あなたの主張はよくわかりました。あなたの言動を見る限り、今日のこの行動は思いつきでしょう」

図星を指されて、今日何度目かの冷や汗が流れた。

書店で見かけた時、本棚の間から飛び出した男の子とその人がぶつかった。泣きべそをかいていた男の子の話を聞き、その人も一緒にはぐれてしまったお母さんを探してあげた。

男の子がお母さんを見つけて抱きついた時のその人は微笑みは、春の陽だまりみたいに暖かだった。

あぁ…この人は、本当に心の優しい人なんだと、しばらく見惚れてしまった。

頭を下げるお母さんの隣で手を振る男の子に、微笑みながら小さく手を振るその人。

その足が書店の出入口に向かっていると気付いた時、無意識のうちに私の足が動いたのだ。

「えっと、その……」

視線をさまよわせる私をスルーして、その人は言葉を続ける。

「次の週末、星野さんが空いている日はありますか?」

「土曜日は仕事ですが、日曜日なら一日大丈夫です」

なぜ週末の予定を訊かれたのか、わからないまま小首を傾げるようにして答えた。

「あなたが私に言った事、本当にそれを望むのか、もう一度よく考えてみてください。意思が変わらなかったら、日曜日の午後三時、またこの場所に来てください。私もよく考えて、あなたの望みを叶えようと思えたなら、またここに来ます」

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