ヴァージンの不埒な欲望
「はいっ!もっ、萌えます」
眼鏡のブリッジを上げながら、コクコクと頷いた。自分でもよくわからない生暖かい空気が、周辺に漂っているようだ。
「星野さん、最後に答えてください」
空気を固くしたその人が、私を見つめる。
「はい」
私も表情を引き締めて、その人を見つめ返す。
「私が、あなたの望みを叶えなかった時、あなたはこれからどうするのですか?」
私は一度、静かに深呼吸をした。
「ネットの出会い系サイトでも覗いてみようか、なんて考えた事もありました」
「星野さん!」
その人が慌てたように、声を荒げた。私は苦笑しながら、首を横に振った。
「あなたに声をかけてお話をして、そんな気力はすっかり消えてなくなりました。それに、ヴァージンを無くす事だけが、私の本来の目的ではないと、ちゃんとわかっているつもりです」
その人が小さく息を吐いた。
「星野さん、私から提案があります。変わってみませんか?あなた自身が」
「私が、変わる?」
スッと背筋を伸ばし、その人は真っ直ぐに私を見つめている。
「もし私があなたの望みを叶えても、その後あなたは、それをきれいな想い出にして、お父様の勧めるお見合いをして結婚をするのでしょう。私なんかの人生は、これで充分幸せだと言い聞かせながら」