ヴァージンの不埒な欲望
「『自分たちが努力して得た技術を、簡単に安売りしてはいけない』と安西さんはおっしゃって、断られてしまいました。もし無理にでも無料(タダ)にしようとするのなら、自分にも考えがあると」
「考え?」
上野さんの真剣な顔に、私の表情も固くなる。こくりと頷いた後、真剣な顔のまま上野さんは続けた。
「『もうここには、二度とカットに来ない。自分の髪はだらしなく伸び続け、そのうちダサいボサボサ頭になるんだ』と」
「・・・」
サラサラ黒髪の拓夢さんが、本当にボサボサ頭になるのだろうか?という疑問はわいたが。がんばって、ボサボサ頭の拓夢さんを想像してみた。ヤバい!ちょっと芸術家風で、結構カッコいい気がする。
「「悪く、ないかも」」
私と上野さんの呟きが重なり、二人で顔を見合わせ、思わず吹き出した。
二人で笑った後、上野さんが笑いを堪えながら再び口を開いた。
「ボサボサ頭の安西さんもカッコいいと思いますが、お仕事的には合わないでしょう。そこでオーナーと相談して、星野さんにお願いしてみようという事になったんです」
「私がPR用の写真を撮る事をOKすれば、そのお礼として料金を無料にする事ができると?」
「はい!その通りです。実際にこちらからカットモデルをお願いして、無料でカットする事もありますから。決して、不自然な事ではありません!」