明日の蒼の空
「こんにちは。馬車に乗せてもらっていいですか?」
 両手で手綱を握り締めている馬車の運転手さんのおじさんに尋ねてみた。

「はい。どうぞご乗車ください」
 馬車の運転手さんのおじさんは笑顔で応えてくれた。

 私はりさちゃんを抱き抱えて馬車に乗り込み、運転席に近い最前列の席に座った。

 十二人乗りの馬車の乗客は、私とりさちゃんだけ。

 客車には屋根も壁もあるので、冷たい風は入ってこない。大きな窓から外の景色がよく見える。視線が高くて眺めがいい。まるでフロンティア時代のアメリカ西部の田舎町にタイムスリップしたような気分。

 窓から外の景色を見ていたところ、りさちゃんが座席から立ち上がり、運転席側の小窓を開けた。

「馬車を引っ張ってる、お馬さんの名前は何ていうの?」
 小さな子供は好奇心が旺盛。

「右側の馬が大五郎で、左側の馬がキャサリンだよ」
 馬車の運転手さんのおじさんは、りさちゃんの方に振り向いて答えた。

「こんなに大きなものを引っ張るなんて、大五郎ちゃんとキャサリンちゃんは、すごい力持ちだね」
 感心している様子のりさちゃんは、座席に座り直し、にこにこと微笑みながら、「お馬さんはニンジンが好きなんだよ」と私に向かって言ってくれた。

「それでは、出発致します」

 パチン! パチン! 馬車の運転手さんのおじさんが鞭を打ち、大五郎ちゃんとキャサリンちゃんに引かれた馬車はゆっくりと動き出した。

 パカパカパカパカパカパカパカパカ。蹄の音が大きくなるにつれて、馬車の速度がどんどん上がっていく。

 私が思っていたより振動は少ない。程よい揺れ心地で、うとうとしてしまいそう。

 私の隣に座っているりさちゃんも、気持ち良さそうに馬車に揺られている。

 両側にひまわり畑が広がっている道を進んでいき、次の停留所に着いた。

 みんなのひまわり憩い食堂にランチを食べに来てくれる、ハツ江おばあさんが乗ってきて、私とりさちゃんの後ろの座席に座った。

 私は後ろに振り返り、ハツ江おばあさんに挨拶をした。

「その女の子は、蒼衣さんのお子さんなのかい?」
 ハツ江おばあさんの質問に、私はどう答えていいのかわからず、「ちょっと複雑な事情がありまして」とだけ答えた。
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