明日の蒼の空
 水道の蛇口を捻って水を飲み、私はいつものベンチに座った。

 隣のベンチには、私より少し年上に見える二人の女性が座っていて、小さな男の子と女の子が砂場で遊んでいる。緑の芝生に寝転んで本を読んでいる青年。広場でキャッチボールをしている親子。今日もほのぼのとした空気が漂っている。

 私は手提げバックから色鉛筆を取り出して、スケッチブックを膝に置き、澄み渡った青空を見上げながら何を描こうか考える。

 今日は、麦わら帽子姿の菓絵さんの似顔絵を描いてみることにした。

 ズボンのポケットに仕舞っておいた五円チョコを口に放り込み、菓絵さんの優しい笑顔を思い出して、真っ白いスケッチブックにオレンジ色の色鉛筆を走らせた。

 ふと空を見上げると、みんなのひまわり憩い食堂の真上に描かれている絵と文字が消えていた。

 いったいどうやって消しているのだろう。何か特殊な消しゴムでも使っているのだろうか。私はまじまじと空を見つめながら、今日も不思議に思う。
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