明日の蒼の空
 今日は……ダイニングの椅子に座って、履歴書を書いている。



 最終学歴は、高等学校卒業。

 職歴は、コンビニで働いていたことがあります。とだけ書かれている。

 免許資格の欄は、空白になっている。

 趣味特技の欄には、写真を撮ることが好きです。空や何気ない風景を撮っています。と書かれている。

 通勤時間は徒歩で五分。

 扶養家族、二人。

 配偶者、無。

 配偶者の扶養義務、無記入。



「あー、やっと書き終わった。あとは、履歴書用の写真か。いくらだったっけ」
 春子さんは背伸びをして椅子から立ち上がり、寝室に入って服を着替えた。

「ちょっとお出かけしてくるから、お留守番しててね」
 日菜子ちゃんと寛太くんに声を掛けて、バッグを持って出かけていった。



 子供部屋でテレビゲームをして遊んでいる日菜子ちゃんと寛太くんの様子を見ながら待っていたところ、春子さんが帰ってきた。

「おやつを用意するから、ちょっと待っててね」と言って、寝室に入って服を着替えた。

 春子さんは、日菜子ちゃんと寛太くんにおやつをあげて、ダイニングの椅子に座り、履歴書に写真を貼って、印鑑を押した。

「何かいい仕事ないかな」とつぶやいて、求人情報誌を読み始めた。

 春子さんにとってはかなりの前進。私は少し安心した。



 徐々に元気になってきているとはいえ、春子さんの精神状態はまだまだ不安定な様子。

 急に泣き出したり、意味不明なことを叫んだり、一人でお酒を飲みながら、正行さんの写真に向かって酷いことを言ったりしている。

 独り言も愚痴も相変わらず多い。
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