明日の蒼の空
「このままあたしと一緒に暮らしてくれるかな?」
 恥ずかしそうに言ってくれた夏美さんの顔を見て、私はすごく嬉しくなった。

 夏美さんは私を頼ってくれている。私を必要としてくれている。私を信頼してくれている。

 これで私は夏美さんの家族。この家は私の家。奈菜子さんの部屋は私の部屋。もし、奈菜子さんが戻ってきたら、物置部屋に私が移動して、夏美さんと私と奈菜子さんの三人で暮らせばいい。

「このまま夏美さんと一緒に暮らしたいです」

「そう言ってくれて、すごく嬉しいな。それじゃあ、明日からもよろしくね」

「はい。私こそ、どうぞよろしくお願い致します」
 私は椅子から立ち上がり、にこにこと微笑みながらビールを飲んでいる夏美さんに向かって頭を下げた。

「そんなにかしこまらなくていいのよ。もっと気楽にしてね」

「はい」

「今夜はこれでお開きにしようか」

「はい。グラスも私が洗いますので、テーブルに置いておいてください」

「うん。ありがとう」

 笑顔でお礼を言ってくれた夏美さんも椅子から立ち上がり、バスタオルを肩に掛けたまま、自室に入っていった。

 覗くつもりはないけど、ドアがいつも開けっ放しになっているので、部屋の中の様子が見えてしまう。

 本が好きな夏美さんの部屋は本だらけ。いろんな種類の本が所狭しと置かれている。まるでちょっとした図書館のよう。

 夏美さんは自室に居るとき、いつも本を読んで過ごしている。

 私は夏美さんに刺激されて、以前より本をたくさん読むようになった。

 三日前の夜から『笑顔と猫とどんぶらこ』というタイトルの、コミカルな旅物語を読んでいる。百八十ページまで読んだ。お風呂に入ってから、続きを読もうと思う。
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