いちごとカルーア【完】
「あ、ピンときてねーな?」
「え、んー……」
「聡美って肝心なとこは覚えてない」
肝心なところってどこだ。いちごパフェ? なにか重要な事項があっただろうか?
崇哉は体を起こしてあくびすると、いそいそと帰り支度を始めるように自身の衣類をかき集め始めた。なんか女子みたい。
急激に心の奥が冷えた感じがして、私たちの正解が分からなくなる。
仕方なく私も元通りに服を着て、お互い無言で綺麗な自分たちに戻っていった。
綺麗な私たちってなんだろう。自分で考えながら不思議な感じがした。
ホテルを出て、崇哉がいつの間にか呼んでいたタクシーに二人で乗り込む。
そこでようやく私たちはお互いに目を合わせて、これからのことを多分、お互いに考えていた。
タクシーに乗った。さあどこへ行くのが正解なんだ?
昨晩、ここへ来るときは他の選択肢なんかなかったみたいに真っ直ぐお互いを見ていたのに、今じゃ間違えた道を軌道修正するみたいに迷ってる。
「一番近い地下鉄駅まで行ってください」
崇哉が指示した通りに、タクシーは走り出す。