いちごとカルーア【完】
「モーニングセット2つで、セットのドリンクはコーヒーで、食後でお願いします」
まだ眠そうな若い店員に注文し、なんとなく眺めていたメニューにいちごパフェの表記を見つけてさっき崇哉が言ったことをぼんやり思い出した。
いちごパフェ……。
「なんか、高校ん時のデートを思い出すね」
そう言ったのは崇哉で、私も同じことを思っていたけど、それよりもっと違うことを思い出しそうな予感がして黙って頷いた。
「あの喫茶店、まだやってんのかなー」
「マスター、結構なおじいちゃんだったもんね」
「俺、あの店のナポリタン好きだったなー」
「私はカルボナーラばかり食べてた気がする」
「食後のデザートは?」
「……いちごパフェ?」
この男は私にいちごパフェばかりを食べさせたがった。
急に思い出す、付き合ってた頃の記憶。
『聡美はいちごパフェね』
そう言って崇哉は、私の分の食後のデザートを注文した、高校生の頃。
二人お気に入りの喫茶店、それぞれ決まったパスタ、食後のデザートを注文してくれる好きだった人。
私は本当はチョコレートパフェの気分の日も、アフォガードが食べたかった日も、チーズケーキが気になった日もあったはずなのに。