いちごとカルーア【完】
「……崇哉の好きな女の子のタイプってさあ」
「可愛らしい子」
ああ、私じゃない。
その人は私じゃない。
高校生だった頃の気持ちを急速に思い出す。
なんで忘れていたんだろう。
私は崇哉の好きなタイプの女の子に少しでも近付きたくて、そうなりたくて、崇哉の理想でありたくて、彼が望む女の子でいたくって。
『聡美はいちごパフェでしょ?』
その言葉に一度も逆らったことがなかった理由を思い出した。
「なんか、思い出してきたぁ」
そしたら笑えてきて、喉の奥からくっくと笑った私に、崇哉も苦笑した。
私はこの人に本音を言えたことがなかったんだ。
1年半付き合って、学校近くの喫茶店ではカルボナーラといちごパフェを、休日のデートでは女の子らしい白いワンピース、携帯電話にはファンシーなくまのストラップを付けて。
崇哉か思い描く彼女であろうとして、そして疲れてしまって、勝手に私から別れを告げた。
「ごめんな、あの頃は。聡美が無理してるの気付いてたけど、俺の理想の彼女になろうと努力してくれてるのが嬉しくてさ。そんな頑張らなくてもいいよって言ってやればよかったのに」
「そしたら私がフラれてたかも」
「そんなことないよ」
「ねえ崇哉」
やっぱり、私たち、もう一回付き合えないかな?