熱愛系エリートに捕まりました
まぁ、常連の女性が一見の男に持ち帰られそうになってるんだから、止めようとするのは当然の対応だろう。

我ながら、今の俺はかなりヤバい目をしてるだろうし。


「彼女はうちの大切なお客さんなのですが…」

「大丈夫です。ちゃんと本気ですから」


言いながら背広の内ポケットから名刺を取り出してカウンターに置くと、肩を竦めた。

そもそも、俺が勧めた度数が高いカクテルを律儀に彼女に作ったのだから、マスターもこの状況の片棒を担いでいる。


この近くでクライアントと打ち合わせをしてきた帰り、たまたま目に入ったカフェバー。

金曜日で夜も遅い時間だったから、飲みたい気分になって立ち寄ったのは僥倖だった。


まさかそこで彼女に出会えるとは思わなかったけど、このチャンスを逃すつもりはない。

彼女本人も言っていたからな。片想いなら自分から動かなければ、と。
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