蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
今日はどうしても、御所に行かねばならない、と、ため息を付きながら龍星は出掛けて行った。

さすがに今日は雅之も仕事らしく、毬は一人時間を持て余す。

毬は一条戻り橋の近くにある龍星の屋敷を抜け出し、東河の近くにあった馬舍目指して歩き始めた。

昨日は女性用の着物だったので雅之の介添えが要ったが、今日は一人で乗りこなして見たかったのだ。

かなりの距離があるが、気にすることなく足を進めた。
新緑の香りが都中に漂い、それだけで元気が湧いてくる。


でも、やはり帰りは龍星の牛車に迎えに来て貰おうかしら、と思いはじめた頃。

子供の泣き声が聞こえ、毬は足を止めた。
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