蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
一の二 遭遇
毬が目を覚ますと外はもうすっかり白んでいて、隣には龍星が眠っていた。
長い睫毛と筋の通った鼻をうっとりと見つめる。
龍星の香の匂いも、仄かに残る酒の匂いもとても好きで、毬は無邪気にその胸に顔を埋める。
男と女が同じ部屋で眠る、ということはこれ以上の意味があると知らないわけではない。具体的に細かいことまで聞かれると、想像もつかないのだけれど。
それでも、毬は寝付くまで面白い話を聞かせてくれる龍星と同じ部屋で眠るという今の状態がとても気に入っていた。
「悪戯仔犬が狼に食べられるって話、知ってる?」
甘えてそのまま瞳を閉じていたら、優しい声が聞こえた上に、ふいに抱きしめられてびっくりした。
「龍、ごめんね。
起こした?」
慌てて離れようとすると、ますますぎゅうと抱きしめられる。
息もできないほど、強く。
「起こされた。
だから、しばらく離してあげない」
龍星にしてみれば、今すぐにでも深く抱きたいところなのに、それは彼女を傷つけそうだからと、その全てを抑えてぎりぎりの距離を保っているのだ。
それなのに当の本人は無自覚に人の欲望を目覚めさせようとする。
目が覚めたら胸の中に顔を埋めている始末だ。
これ以上の忍耐を架すというのか?
「ごめんなさい」
怯えた仔犬の訴えを無視して、力の限り抱きしめる。
本当は、彼女は何も悪くないのに。
「ごめん、ね、龍」
途切れた息、今にも泣き出しそうな声。
我に返った龍星は慌てて腕の力を緩めた。
「毬は悪くない。
ごめん、怖がらせて。
もう苦しくない?」
怯える彼女の頭を優しく撫でた。
離れようとする毬にそっと言い聞かせる。
「毬は良い子だから、ここに居て」
自分にも言い聞かせるように、そっと。
長い睫毛と筋の通った鼻をうっとりと見つめる。
龍星の香の匂いも、仄かに残る酒の匂いもとても好きで、毬は無邪気にその胸に顔を埋める。
男と女が同じ部屋で眠る、ということはこれ以上の意味があると知らないわけではない。具体的に細かいことまで聞かれると、想像もつかないのだけれど。
それでも、毬は寝付くまで面白い話を聞かせてくれる龍星と同じ部屋で眠るという今の状態がとても気に入っていた。
「悪戯仔犬が狼に食べられるって話、知ってる?」
甘えてそのまま瞳を閉じていたら、優しい声が聞こえた上に、ふいに抱きしめられてびっくりした。
「龍、ごめんね。
起こした?」
慌てて離れようとすると、ますますぎゅうと抱きしめられる。
息もできないほど、強く。
「起こされた。
だから、しばらく離してあげない」
龍星にしてみれば、今すぐにでも深く抱きたいところなのに、それは彼女を傷つけそうだからと、その全てを抑えてぎりぎりの距離を保っているのだ。
それなのに当の本人は無自覚に人の欲望を目覚めさせようとする。
目が覚めたら胸の中に顔を埋めている始末だ。
これ以上の忍耐を架すというのか?
「ごめんなさい」
怯えた仔犬の訴えを無視して、力の限り抱きしめる。
本当は、彼女は何も悪くないのに。
「ごめん、ね、龍」
途切れた息、今にも泣き出しそうな声。
我に返った龍星は慌てて腕の力を緩めた。
「毬は悪くない。
ごめん、怖がらせて。
もう苦しくない?」
怯える彼女の頭を優しく撫でた。
離れようとする毬にそっと言い聞かせる。
「毬は良い子だから、ここに居て」
自分にも言い聞かせるように、そっと。