蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
「龍星のことだから、教わらなくても分かるよね?

 龍星があの子から手を放しちゃったから、奪おうと思って昨日左大臣家に行ったんだ」

……帝が夜這い?

ありえない。
一般貴族じゃあるまいし。

簡単に、帝が、左大臣家へ?

龍星は奥歯を噛み締めた。

その、僅かの変化も帝は見逃さない。
得意げな、勝者の笑いを浮かべる。

「悔しい?
 でも、仮に行かなくても他の誰かが行くんじゃないかな。
 簡単に入れるよ、あの屋敷」

「お話はそれだけですか?」

震えそうになる声を押し留めて、極めて冷静に言葉を発する。

「まさか。
 その後の、部屋の話がしたくて呼んだんだよ。

 夕べのあの人の話、聞きたいでしょ?」

帝の瞳は挑発の光を発している。

普段……特に御所では……、何の感情も発しない龍星の瞳も、今ばかりは強く煌いていた。


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