蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
誰からも崇められる存在。
それが京の都における帝の存在である。
が、その帝を全く崇めない輩も居た。
その一人が安倍龍星。
異質な眼差しは大勢の中で目立ち、最初は帝を苛立たせていた。
そのうち、興味を持てる対象となり、今となってはどうにかして平伏させたい相手であった。
今、まさにそれが叶おうとしている。
帝は身についている上から目線で口を開いた。
「あの子に逢ったのは、東宮だった時分。
まだ感情を持て余していた頃。
気晴らしに行った嵐山の別荘から抜け出し、草の上に寝そべって広い空を眺めていたんだ。
いつになったらあっちに行って自由になれるんだろうって。
そしたら、ばさって音がしてね。
空から降ってきたんだ、神の遣いが」
話している内に、その光景が帝の頭に甦る。
眩しいほど生気の宿る新緑の季節に、あれは、空からやってきたのだ。
龍星は始まった話に、ただ耳を傾けるほかない。
「人の形をしていたから、慌てて薬師は呼んだよ。
でも、瞳を閉じているあの子、とても綺麗だったんだ。
どこから来たのか、どうして来てくれたのか。
聞きたかったのに全然教えてくれなくて。
少なくとも一緒にいる間は【男の子】だった。
着ている服も、喋り方も、遊び方も。あまりにも顔が綺麗なことを除けば、何もかも、完璧なくらい【男の子】で。
その頃は知らなかったんだ。龍星みたいに顔が綺麗な男性も居るってことはね。
とにかく、初めて出来た年下の友達に、夢中になって遊んだよ」
得意げに帝が話すのは、龍星が見たことの無い昔の毬のことだろう。
それが京の都における帝の存在である。
が、その帝を全く崇めない輩も居た。
その一人が安倍龍星。
異質な眼差しは大勢の中で目立ち、最初は帝を苛立たせていた。
そのうち、興味を持てる対象となり、今となってはどうにかして平伏させたい相手であった。
今、まさにそれが叶おうとしている。
帝は身についている上から目線で口を開いた。
「あの子に逢ったのは、東宮だった時分。
まだ感情を持て余していた頃。
気晴らしに行った嵐山の別荘から抜け出し、草の上に寝そべって広い空を眺めていたんだ。
いつになったらあっちに行って自由になれるんだろうって。
そしたら、ばさって音がしてね。
空から降ってきたんだ、神の遣いが」
話している内に、その光景が帝の頭に甦る。
眩しいほど生気の宿る新緑の季節に、あれは、空からやってきたのだ。
龍星は始まった話に、ただ耳を傾けるほかない。
「人の形をしていたから、慌てて薬師は呼んだよ。
でも、瞳を閉じているあの子、とても綺麗だったんだ。
どこから来たのか、どうして来てくれたのか。
聞きたかったのに全然教えてくれなくて。
少なくとも一緒にいる間は【男の子】だった。
着ている服も、喋り方も、遊び方も。あまりにも顔が綺麗なことを除けば、何もかも、完璧なくらい【男の子】で。
その頃は知らなかったんだ。龍星みたいに顔が綺麗な男性も居るってことはね。
とにかく、初めて出来た年下の友達に、夢中になって遊んだよ」
得意げに帝が話すのは、龍星が見たことの無い昔の毬のことだろう。