蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
三 もつれた糸
「失礼します」
完全な人払いをしていたはずのその部屋に、無礼にも乗り込んで来たのは雅之だった。
尋常ならぬ表情で、息はあがっている。
「帝、非礼をお許し下さい」
龍星と違い、【帝は絶対】という価値観を持った雅之は本当に申し訳無さそうに頭を下げると、龍星の腕を掴んだ。
「龍星、来てくれ。
今すぐに」
「雅之まで龍星に似てくるなんて、ちょっと残念」
つまらなそうに帝が言う。
「行けばいいよ、龍星。
きっと急ぎの用だ。
私はあの子ととことん縁が無いに違いない」
自嘲的に帝が言った。
無言で立ち上がる龍星の背中に、帝が言う。
「でも、今度手を放したら絶対に私が攫うから」
龍星が、いつもと変わらぬ颯爽とした冷静な顔で振り向いた。
「残念ですが、二度とその機会はないですよ」
言うと、雅之とともに足早にそこを去っていく。
「そう?
でも、これでせめて対等に扱ってくれるよね?」
帝の言葉は誰の耳にも届かぬまま、宙に霧散した。
完全な人払いをしていたはずのその部屋に、無礼にも乗り込んで来たのは雅之だった。
尋常ならぬ表情で、息はあがっている。
「帝、非礼をお許し下さい」
龍星と違い、【帝は絶対】という価値観を持った雅之は本当に申し訳無さそうに頭を下げると、龍星の腕を掴んだ。
「龍星、来てくれ。
今すぐに」
「雅之まで龍星に似てくるなんて、ちょっと残念」
つまらなそうに帝が言う。
「行けばいいよ、龍星。
きっと急ぎの用だ。
私はあの子ととことん縁が無いに違いない」
自嘲的に帝が言った。
無言で立ち上がる龍星の背中に、帝が言う。
「でも、今度手を放したら絶対に私が攫うから」
龍星が、いつもと変わらぬ颯爽とした冷静な顔で振り向いた。
「残念ですが、二度とその機会はないですよ」
言うと、雅之とともに足早にそこを去っていく。
「そう?
でも、これでせめて対等に扱ってくれるよね?」
帝の言葉は誰の耳にも届かぬまま、宙に霧散した。