蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
馬舎についた三人はすばやく馬から降りる。
「龍星、こちら……」
雅之は言いかけて、言葉を止めた。
何も無い空間を、龍星が睨みつけていたからだ。
「後で行く」
翁と雅之を先に行かせ、龍星はそこに見えるものに声を掛けた。
「ここで何を?」
それは、いつぞや女の部屋から追い出した少年だった。
酷く震えた顔で、そいつは言った。
「真竜が、急に倒れたから。
心配で。
折角一緒に遊んでたのに」
「まりゅう?」
龍星は訝しむが、少年は嘘をついている様子は無い。
毬がそう名乗ったのだろうと受け取った。
「そう、あの子の名前。
オラと遊んでくれるって言ったんだ。
迷子になって泣いてたら、手を差し伸べてくれたんだ」
……自分が放してしまったあの手を。
龍星は不覚にも胸の奥がちくりと痛んだ。
「だから一緒に遊んだのに。
なんで、こんな」
少年の瞳から涙が溢れる。
……死んでいる自覚がないのだろうか。
龍星はため息を飲み込んで、馬舎の中へと急いだ。
その背中に、少年の泣きじゃくる声が飛ぶ。
「真竜は良い奴なんだよぉ。
一緒に大きくなって、二人で酒を酌み交わせるような親友になるって、約束したんだっ」
龍星は知らず、唇を噛み締めていた。
「龍星、こちら……」
雅之は言いかけて、言葉を止めた。
何も無い空間を、龍星が睨みつけていたからだ。
「後で行く」
翁と雅之を先に行かせ、龍星はそこに見えるものに声を掛けた。
「ここで何を?」
それは、いつぞや女の部屋から追い出した少年だった。
酷く震えた顔で、そいつは言った。
「真竜が、急に倒れたから。
心配で。
折角一緒に遊んでたのに」
「まりゅう?」
龍星は訝しむが、少年は嘘をついている様子は無い。
毬がそう名乗ったのだろうと受け取った。
「そう、あの子の名前。
オラと遊んでくれるって言ったんだ。
迷子になって泣いてたら、手を差し伸べてくれたんだ」
……自分が放してしまったあの手を。
龍星は不覚にも胸の奥がちくりと痛んだ。
「だから一緒に遊んだのに。
なんで、こんな」
少年の瞳から涙が溢れる。
……死んでいる自覚がないのだろうか。
龍星はため息を飲み込んで、馬舎の中へと急いだ。
その背中に、少年の泣きじゃくる声が飛ぶ。
「真竜は良い奴なんだよぉ。
一緒に大きくなって、二人で酒を酌み交わせるような親友になるって、約束したんだっ」
龍星は知らず、唇を噛み締めていた。