蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】

三の三 哀しき別離

龍星も毬の笑顔につられて笑い、そっと濡れた頬に唇を落とした。

毬の耳まで朱に染まる。

「あの、えっと」

甘さの漂う沈黙に耐え切れず、口を開いたのは毬のほうだ。

「私はどうしてこうも倒れるの?」

「それは俺も知りたいな。
 毬は何をしているときに倒れるの?
 さっきは何をしていたのかな?」

龍星が優しく問う。

「友達と遊んでたの。おうちが無くて困ってたから。
 私が淋しいときに、雅之が馬に乗せてくれて元気になったから、彼にもそうしてあげたら良いと思って」

「雅之は昼間に連れて行ってくれたんでしょう?
 夜の外出は感心しないな」

「ごめんね、龍が駄目って言うならもうしない」

「言わない。
 でも、心配はする」

ふわり、と、龍星は優しく毬の頭を撫でる。

「毬は男の子になりたい?」

龍星の問いかけに、毬は表情を硬くした。

「それ、今答えなきゃ、駄目?」

「そんなことない。
 もし、毬がお話したくなったら、そのときは教えてくれるかな」

「分かった」

毬は頷いて、ふぅと息を吐いた。


……龍星が居なかったら男の子になりたいんだけどな。
  龍星が居てくれたらそんな風に思わないのに。


言葉に出来ない感情がぐるぐると胸の内を回っていた。
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