蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
「龍星」
外で雅之が呼んだ。
声から、緊迫感が伝わってくる。
龍星は毬の手を掴んで外へ走った。
「どうし……」
聞かなくても異変が分かる。
馬が皆、一点を見つめて殺気立っている。
雅之や翁が見ても何も見えないそこ。
しかし、毬が目を険しくして言った。
「太一っ
駄目だよ」
少年が石を持って馬たちを睨みつけている。
「真竜」
毬の声に太一が顔を上げた。
毬は龍星の手を振りほどいて駆け寄ろうとする。
でも、龍星はその手を放さない。
「龍?」
訝しげに見上げる毬に、龍星が鋭く言った。
「駄目だ。
彼は人ではない」
「何言ってるの?だって、足あるのに」
「物の怪にだって足くらいある。
ろくろ首に傘おばけ、妖怪になったキツネや猫又にも足はある」
「酷いこと言わないで。
太一は、」
「真竜」
毬の言葉をさえぎって太一が名を呼んだ。
ありったけの念をこめて。
「―――くっ」
刹那、思いがけず身体を走る衝撃に驚いて、毬が苦しむ声をあげる。
眉間に深い皺が寄る。
「一緒に大人になるって約束しただろ?」
少年が悲鳴に似た叫び声をあげた。
龍星は諦めて毬の前へと歩み出る。
手を放すと、印を結び、呪を唱え始めた。
「滅」
長い呪の後、最後にそういうと、太一は煙のように姿を消した。
「……んで、なんでよっ
折角友達になれたのにっ」
龍星の隣で、ようやく呼吸が自由になった毬は泣きながら声をあげた。
外で雅之が呼んだ。
声から、緊迫感が伝わってくる。
龍星は毬の手を掴んで外へ走った。
「どうし……」
聞かなくても異変が分かる。
馬が皆、一点を見つめて殺気立っている。
雅之や翁が見ても何も見えないそこ。
しかし、毬が目を険しくして言った。
「太一っ
駄目だよ」
少年が石を持って馬たちを睨みつけている。
「真竜」
毬の声に太一が顔を上げた。
毬は龍星の手を振りほどいて駆け寄ろうとする。
でも、龍星はその手を放さない。
「龍?」
訝しげに見上げる毬に、龍星が鋭く言った。
「駄目だ。
彼は人ではない」
「何言ってるの?だって、足あるのに」
「物の怪にだって足くらいある。
ろくろ首に傘おばけ、妖怪になったキツネや猫又にも足はある」
「酷いこと言わないで。
太一は、」
「真竜」
毬の言葉をさえぎって太一が名を呼んだ。
ありったけの念をこめて。
「―――くっ」
刹那、思いがけず身体を走る衝撃に驚いて、毬が苦しむ声をあげる。
眉間に深い皺が寄る。
「一緒に大人になるって約束しただろ?」
少年が悲鳴に似た叫び声をあげた。
龍星は諦めて毬の前へと歩み出る。
手を放すと、印を結び、呪を唱え始めた。
「滅」
長い呪の後、最後にそういうと、太一は煙のように姿を消した。
「……んで、なんでよっ
折角友達になれたのにっ」
龍星の隣で、ようやく呼吸が自由になった毬は泣きながら声をあげた。