蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
龍星は包み込むように毬の手を握る。

目の前にいる彼女の視線はどこか遠くを彷徨っていた。

毬が少年のように喋るのを見るのは初めてで、驚きの方が強かったがそれは表情には出さない。
帝も同じことを言っていたと、頭の隅で思い出していた。

その霊との関係は性別を変えるほどのものだったのだろうか。

心配になる、と同時に、毬のことを何も知らないと言う焦燥感にも似た思いに晒されていた。

「毬」

優しさを込め、艶やかな声で名前を呼ぶ。

「龍」

その声で我に返り、視線を絡めた瞬間、毬はいつもの女の子らしい柔らかな表情で微笑んだ。
そのまま、龍星の胸に顔を埋める。

「しばらく、こうしていて良い?」

耳に馴染んだ甘えた可愛らしい声。

「いつまでもこうしていると良い」

龍星はほっとして、毬を抱きしめた。
苦しがらない程度の力で。

「ありがとう。
 こうしていると落ち着くの」

毬は龍星の香の匂いが大好きなのだ。
幾度も深く呼吸して、気を鎮めていた。



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