蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
龍星が扉を開けると、取り乱したあの女があいも変わらず号泣していた。
着物は血に染まり、半狂乱で。

「また、出たんですっ。私を刃物で刺そうとして、かばってくれた主人が刺されてしまって……」

龍星は小さく呪を唱え、雅之の元に遣いを送る。

刃物を使う霊などまずいない。
女の狂言でなければ、犯人は十中八九人間だ。


「ご主人は今?」

「分かりません、私、無我夢中で」

「暫くすれば助っ人が来るので、一緒に行きましょう」

「俺が待っているから、先に行けよ」

澄んだ声に振り返る。
毬が男の子と見間違う姿でそこに居た。


「彼は?」

突然現れた美少年に、女がつい口を挟む。

「はじめまして。私、先生の元で見習いをしているものです」

男装が見破られなかったことに気を良くした毬は、低めの声で挨拶した。


龍星は諦めて、行き先を説明すると、女と共に先に出た。
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