蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】

四の二 真相究明

「毬、龍星は?」

雅之が馬を走らせてきた。
男装のまま門の前に立っていた毬に躊躇うことなく声をかける。

「人が刺されたらしいので、先に行くよう勧めた。場所は聞いている」

雅之は当然のように手を伸ばすと、毬を簡単に馬に乗せた。自分の前に抱えるように。

「一緒に来るんだろう?」

「龍、怒らないかな?」

毬が心配そうに問うのが雅之には可笑しくてたまらなかった。龍星にしろ、毬にしろ、気持ちは通じ合っているはずなのに、なぜあえて擦れ違おうとするのだろうか。
馬を走らせながら言う。

「何のこと?」

「俺が現場に行くことと、こんな格好してること」

「止(や)めたいの?」

「止められないからここにいるんだろ。龍の役に立ちたいんだ」

毬が苛立ちを隠せぬ声を上げる。
恋愛というのは、つまらぬ意地の張り合いなのだなと思い、それは同時に切ないくらい可愛らしくもあり、雅之はくすりと笑う。

「怒らせておけば良い」

「嫌。寝る場所なくなるのは困る」

「いつでもうちに来れば良い。毬は友達だからな」

「雅之、ありがとう」

毬はようやく雅之の腕の中で笑い、知っている範囲で事件の概要を伝えた。
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