蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
現場に駆け付けた龍星は、男の死体を見て唖然とした。

腹は掻き切られ、顔は抉られ、とても目の当てられる様ではない。

寝室は血の匂いが充満していた。


「犯人は?」

鋭い声で女を詰問する。

「だから、霊の仕業だって、」

女は目を泳がせながら言う。
龍星はその肩を乱暴に掴み、冷たい眼差しで女を睨んだ。


「どんな霊だって?」

「ヒイッ」

冷たい殺気に気圧され、女は背中に汗を垂らす。


「龍星」

玄関から親友の声がした。

龍星は部屋を出て、一緒に来た毬を捕まえた。彼女が不用意にあの死体を見ないように。

そして雅之に、殺人事件のため検非違使に連絡するよう頼んだ。


「俺は何をすれば?」

毬が龍星の腕の中で藻掻きながら問う。
龍星はため息をつく。

「出来れば、うちでゆっくりしていて欲しかった」

「駄目だよ。俺だって龍の役に立ちたい。
ただのお姫様ではいたくないんだ」

真剣な眼差しが龍星を射抜く。無理に止めたら暴走しそうな、熱を帯びた瞳で。
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