蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
「あなたの息子さん、ですよね」

毬が問う。

「し、知りませんっ」

律は感情的な金切り声をあげた。

「真竜、もういいよ」

太一の声がして、毬は弾かれたように顔をあげた。
龍星は深紅の唇を噛みしめ、懐に手を入れ数珠を掴んだ。

「太一、戻ってきたのか?」

毬が驚いて立ち上がり近付こうとする。

「駄目だ」

龍星が真顔で毬の手を掴む。


彼は凄腕の陰陽師なのだ。霊を滅したのは間違いない。

一度滅した霊が再来するなんて、死んだ人間が生き返るのと同じくらいありえない。


あり得るとしたら、それは……

「太一、太一がいるの?」
毬と龍星のやりとりを不思議そうに見ていた律が、見えない姿を探して空(くう)を掴む。


「やっぱり息子じゃないか」


律の様子を見て、毬が呟いた。
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