蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
「なあ、龍……」

同意を得ようと、龍星を仰ぎ見た毬は、龍星の表情が緊張感で強張っていることにようやく気付いた。

「龍?」

驚いた毬の口調が普段のものに変わる。

「真竜、外の様子を見ておいで」

龍星は有無を言わせぬ強い口調でそう言った。

……今、真竜って、呼んだ?

「急いで」

疑問を口にする前に、冷たい視線と鋭い声に急かされた。

毬は黙って、駆け出した。
< 52 / 95 >

この作品をシェア

pagetop