蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】

五の三 長い夜

雅之を見送った龍星は、再びいつもの場所へ戻り中庭を眺めていた。



「……龍」

自分を呼ぶ愛らしい声に目を覚ます。

いつの間にか辺りは真っ暗になっていた。
手を叩いて火を灯す。

目の前には心配そうに龍星をみつめる毬がいた。

「こんなところで寝たら風邪引くわ」

「毬はもう大丈夫?」

龍星の問いかけに毬はこくりと頷いた。
未だ昼と同じ少年の格好をして。


龍星は身体を起こす。

「毬にはお姫様の格好の方がずっと似合うのに」

龍星が解けた毬の髪を撫でながら言う。

「だって!馬に乗りたかったんだもの」

「それだけ?」

龍星が毬の瞳を覗き込む。
毬は思わず視線を反らした。
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