蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
「なかなかの集中力と練習量だ」

やや離れたところでそれを見ながら、翁が毬に囁いた。

「……そうですね」

毬は頷く。

「彼は天才肌だと言われているけど、努力あってこその才能だね」

「……そうですね」


毬は雅之から目を放さずに頷いた。

引き締まった筋肉。
突き刺さるような鋭い眼差し。
いつもの雅之とは、全くちがう――


近づき難い空気を纏った雅之が、更に幾度も弓を飛ばす。



「雅之殿」

手持ちの弓が尽きた時、助言のため翁が声を掛けた。

「はい」


雅之が振り向いた時、もうそこに毬の姿はなかった。
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