蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
毬はゆっくり瞳を閉じる。

このままで良いはずもないのに、どうしたら良いのかまるで見当もつかない。


左大臣家に今更戻るわけにはいかない。
記憶が戻ったことにして、帝の側室になれば良いのだろうか。でも、それは千をひどく傷つけることになるだろう。



どこに行けば、
何をすれば、
どうすれば、良いの?



毬は奥深い山の中で、道を見失ってしまった小鹿のように、暗く重く不安な気持ちを覚え、橋の欄干で瞳を閉じたまま動けなくなってしまった。


太陽はゆるやかにしかし着実に西へ西へと傾いていく。

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