笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
10 リンゴ咲かじいさん
「ピポピポピ、ピポピポピポピポピポピポピポピポ」
「何て言ったんですか?」
「また今度、みんなで流しソーメンをしようね。って言ったんだよ」
「あはははは! ピポピポ語は難しいですね」

 あたしとまなちゃんとの間で、ピポピポ語ブームが沸き起こった。
 お互いに何を言っているのか、さっぱりわからない。それでもなんだか楽しい。


 ピポピポ語で会話をしながら険しい山道をのらりくらりと歩き続けていき、池袋を出発してから、六十二日目にして、青森県に入った。

 博学なまなちゃんの話によると、青森県には大きな半島が二つあり、東側の半島が下北半島で、西側の半島が津軽半島というらしい。
 
 あたしとまなちゃんが目指している青函フェリーターミナルは、二つの半島の手前に位置しているとのことだった。

 青森県と聞いて思い浮かぶものは、ねぶた祭り。津軽三味線。恐山。イタコ。大間の本マグロ。そして、蜜の詰まった真っ赤なリンゴ。北海道に渡る前に、本場の美味しいリンゴを堪能したいと思う今日この頃。

 青森県に入ってから二日後に、まなちゃんの歌が完成した。
 真剣に作った曲なので、当然のことながら、ピポピポ語は入れていない。
 可愛らしい歌詞とメロディーの、まなちゃんの歌をお披露目するのは、北海道の宗谷岬に着いたとき。


 まだ八月の上旬。夏真っ盛り。今日も朝から真夏の日差しが照りつけている。ちょっと歩いただけで、全身から汗が噴き出してくる。

 旅費を節約するために、ここ数日間、ずっとテントで寝泊りしていたため、あたしもまなちゃんもお風呂に入っていない。小さな川で水浴びをしただけだ。今はとにかくお風呂に入りたい。体を洗ってさっぱりしたいと思う今日この頃。
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