笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
4 日本海の荒波を目指して
「さきさん、おはようございます。もうすぐ八時になりますよ」

 アニメの声優のような甲高い女性の声を聞いて目が覚めた。

 久しぶりに熟睡できたようで、今朝は目覚めが良い。

 にこにこと微笑んでいるまなちゃんの顔が見える。昨日のことは夢ではなかったようだ。

「まなちゃん、おはよう。起こしてくれて、ありがとね」
「どう致しまして。チェックアウトは、十時ですので、もう少し休んでから出発しましょうか」
「うん。もう少し休ませてもらうね」
「私はシャワーを浴びてきます。あとでドライヤーを貸してもらえませんか?」
「いいよ。まなちゃんのベッドの上に置いておくね」

 何かと気を遣ってくれるまなちゃんは、部屋のシャワー室に入り、あたしはベッドに座ったまま、ぼーっとした。

 旅に出てから今日で一週間。ちょっと疲れが溜まっている感じがする。

「さっぱりしました。ドライヤーをお借りしますね」
 シャワー室から出てきたまなちゃんは、あたしのドライヤーで長い髪を乾かして、浴衣を脱いで私服に着替えた。あたしもまなちゃんもノーメイク。

 あたしはノーメイクだとブスだけど、まなちゃんはノーメイクでも可愛らしい。
< 47 / 258 >

この作品をシェア

pagetop