笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
5 純粋な心と汚れた心
 ピューピュー♪ ピューピューピュー♪ 

 可愛らしい口笛を吹きながら歩いているまなちゃんを見ていて、歩くということは、本当に素晴らしいことだと改めて思った。

 足腰が鍛えられるし、体力がつくし、健康に良いし、心を元気にさせてくれる。



 上り下り。上り下り。ず――――――――と上り。そしてまた下り。そしてまた上り。深い森に囲まれた険しい山道を歩き続けて、ようやく新潟県に入った。

 地理に詳しいまなちゃんの話によると、新潟県は横に長い県とのことで、道を間違えさえしなければ、あと数日で日本海にたどり着けるとのこと。
 とはいっても、焦ってはいけない。転んで怪我をしたら大変。焦らずゆっくり歩いて、こまめに休憩を取らなければならない。

「ついさっき、休憩したばかりだけど、川に降りて休憩しようか」
「はい。休憩しましょう」
 あたしとまなちゃんは、道路沿いの土手を降りていき、川のほとりに腰を下ろした。

 お日様の光に照らされた水面がキラキラと輝いていて、苔むした大きな岩に青い鳥が止まっている。小さな滝から飛んでくる水しぶき。マイナスイオンがたっぷりと含まれていそう。静かな森に囲まれた清らかな川。車の音も人の足音も話し声も聞こえない。あたしの耳に聞こえてくるのは、川を流れる水の音と鳥のさえずりだけ。
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