食わずぎらいのそのあとに。
結局私の体調を気にしてくれるタケルにつけ込む形で、うちの実家に行くのは先延ばしして翌週末にはタケルの家に行くことにした。

うちから歩いていける隣の駅で、お母さんとの2人暮らし。小さな頃からずっと住んでいる実家だ。




タケルのお母さんは、聞いてはいたけれどすごく若い人だった。

40代半ばという実年齢も若いが、見た目の印象も話した感じも「お母さん」というより「先輩」に近いというか。

タケルと歩いてても親子に見られず妙な関係だと勘ぐられたりするらしい。

この人が、私の義理のお母さんになるんだ。ますますぴんと来ないくらい若い。

「こんなしっかりしたお嬢さんが、うちの子にねぇ」

お互い様な感想らしい。30才間際の娘ができるとは予想外だろう。すみません、ほんと。

「タケルが女の子妊娠させちゃうんじゃないかっていうのは、長年の悪夢だったんだけど」

「なに言ってんだよ」

「大人の女性でよかった」

ニコッと、本当に嬉しそうに笑ってくれた。

その瞬間、また私の意思とは関係なくぶわっと涙がにじんで来て、慌てて瞬きしてごまかす。

「香ちゃん」

「はい」

「予想外にできちゃった子どもって、特別の授かりものだから、2人で大事にしてあげてね?」

わかってるんだって思って。私の不安とか戸惑いとか全部、この人わかってるじゃないかと思って、声にならなくてただコクコクと頷いた。

「毎日泣きすぎ」

タケルは呆れたように言いながら、そっと涙を指で拭ってくれる。

「ホルモンのせいなんだってさ」

偉そうに言うタケルは「わかったようなこと言ってんじゃないの。大変なのは女ばっかりよ」とお母さんに叱られていた。

大変だったんだろうな、お母さん。私よりもっと若くて、もしかしたらもっと不安定な関係で。私も頑張らないと。

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