食わずぎらいのそのあとに。
考えることやることを、リストアップしてタケルが紙に書きだしていく。産む病院も決めないといけないし、会社への報告とか、結婚と出産で手続きとかもたくさんある。

仕事のタスクリストという雰囲気で、結婚の現実には甘さはない。

「いろいろあるけど、まずは香のうちにあいさつだよな」

「そう? 落ち着いてからでいいよ?」

「先にちゃんとしといたほうがいいよ」

タケルはそういうけれど、電車で1時間では着かない実家にはお正月に帰ったばかりだ。その時も「彼氏を連れてこい」とうるさく言われて急遽タケルに来てもらったりして、本当にめんどくさい父と祖父なんだ。

「順番逆になったこともちゃんと謝っておきたいから、明日にでも行こう」

「そんなの気にしないと思うよ。私なんてずっと一人暮らしだし、跡継ぎじゃないし、勝手にしろって思われてるの」

「わかってないよな、ほんと」

口癖のようにタケルは言う。確かに私はいろいろわかってないけど、うちの家族のことぐらい私のほうがわかるでしょ!

「近いんだし、行くならタケルのお母さんに先にあいさつしようよ」

「そっちこそ勝手にしろって感じだと思うけどね」

「だって私会ったことないし」

隣の駅に住んでいるけれど、タケルのお母さんには紹介されてない。勢いとはいえ私は家族に紹介してるのに、タケルは全然そんな気なかったなと今更思う。

いやいや、こういう暗い考えをやめるんだってば。

「貧血もあるし、遠出はちょっと落ち着いてからにさせて」

今日歩き回っても平気だったくせに、勝手なことを言ってみる。

体調のことはタケルも心配してくれるらしくて「健太がいたりうるさいからな」と折れてくれた。

甥っ子の健太はタケルに何度も会っていて、よく懐いている。もうすぐ小学生になるやんちゃな男子で、確かに今健太にとびかかられたりするのはきついかもしれない。

健太の母であるお姉ちゃんもうるさく何か言いそうだし、なるべくなら後回しにしたい。


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