ビルに願いを。
ラウンジに集まったみんなは全員こぎれいなスタイルで、着替えてきてよかったとホッと胸をなでおろす。
革張りのふかふかソファに思い思いに座って、「適当に」と社長が頼んだ通り、いろいろな料理がタイミングよく運ばれてくるのをつまみながらゆっくり話をする。
思っていたよりも、ずいぶん寛ぐための場所みたい。少し離れた場所にはカップルや男同士の集団などがいて、でもお互いの気配を感じないくらいスペースに余裕がある。
キョロキョロしていたら、また丈に見られていて笑われた。
メアリさんが約束通りメイを、社長は麻里子さんを連れてきていた。
「いろいろごめんね、杏ちゃん。仕事も恋も、人それぞれのやり方があるって今回思ったわ」
「麻里子さんて、社長と」
「そういうわけじゃないの。それはそれよ。仕事外ではよい友人関係ね、今のところ」
でもお休みの日に呼ばれてここまで来るなんて、ちょっと特別な気がするのに。大人の恋は複雑そうだ。
メイとメアリさんはヘリコプター観光の話をしていた。ちょっとスリルがあって楽しいって。またどこかへ出かける約束をしている。
「アンも一緒に行くでしょう?」
「ガールズトークも必要だよね?」
2人は私も誘ってくれる。不思議な友人関係ができそう。