ビルに願いを。
「で、ビジネスの立ち上げはどうなった、メイ?」

社長が突然切り出した。愛玩犬の健康管理プログラムを普及させるという話らしい。

「会社じゃなくNPOとしてやるかもしれない。そしたら寄付してくれる?」

「経営計画による。こないだ指摘した部分は解決できた?」

「俺は出すよ」

丈が横から軽く言うと、社長がうんざりしたような声を出した。

「お前はビジネスってものをわかってない」

「誠也に鍛えてもらいなよ、メイ。素質ありそう」

ふざけたように丈が言い、社長がため息をついた。

「確かにお前は人を信じて伸ばすのが得意だよ。杏ちゃんも短期間でよくやってる。でもな」

「ケイティはもっと元気に生きることができたはずなんだ」

丈が静かに社長を遮る。

「メイは何頭も面倒みながら学んできた。アイデアも情熱もある。誠也が力を貸せば、必ず何かできる」

いつもは雄弁な社長が黙った。麻里子さんが隣で微笑む。

「……そう簡単なものじゃないんだよ」

「そうね、でも本気なら私も投資しようかしら。個人的に」

メアリさんも言い出した。この人も桁違いのお金持ちなのかな、やはり。

「少額からね。どうせ失敗するんでしょうし」

出た、不器用な若者好きな発言。

そこからワイワイと具体的な話に発展して、本当にメイが仲間と組織を立ち上げる方向になるらしい。ほんと、すごい人たち。

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