ビルに願いを。


ああ、こうやって終わるんだ。

予想外のようでもあり、わかっていたような気もして、不思議に落ち着いた気分で私も彼を見た。

終わりが近い気はしてたの。

でも、まさか松井くんが終わりを運んでくるなんて。こんな空の上まで。





「この子はうちのエンジニアだけど、君は誰?」

どんな時も淡々とした口調に聞こえる丈の声が聞こえる。でも怒りを含んでいる。

「エンジニア?」

松井くんは思いがけない事態に一度言葉を失ってから、ビジネスモードに立て直して頭を軽く下げる。

「失礼しました。私は、こちらの法律事務所で」

「どうした、松井。フェニックスのジョーさんですよね。うちのインターンが何か失礼を?」

慌てたように黒いスーツの男性が割って入ってきた。法律事務所? アッパーフロアの会社か。

丈が問いかけるように私を見たから、慌てて首を振った。騒ぎにしないで。

「大丈夫。何か勘違いしただけだよね? でも口には気をつけたほうがいいよ。行こう」

「失礼いたしました」

男性が腰まで折って頭を下げるのを目の端で見た。松井くんは呆然とした様子で立ったままでいた。

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