ビルに願いを。


走って、走って、息が切れて、もう走れなくて歩き出した。

でも、それでも。

それでも、好き。

気が多くても、寂しがりなだけでも、それでも私は丈が好きだと今更思う。

私を見てるからじゃなくて、私が彼を見てるから。

どんな風に思われてても、どんなに釣り合わない相手でも、それでも丈が好きなんだ。

怖がらずに、指輪をはずしたままでいればよかった。

圭ちゃんが言うみたいに、はずしてくれる人を待つんじゃなくて。ただ、『ゴールドのほうが似合う』と言ってくれるあの声を信じて自分ではずせばよかった。




いつだって、私は遅い。

気づくのが遅い、わかるのが遅い。

昔のことを気にして、未来のことを気にして、間違わないようにって足がすくんで。

結局間違えるんだよ。失敗するの。だって、若いから。初めてのことばっかりだから。メアリさんもそう言ってた。

だったら、勇気を出して失敗すればよかった。全部ぶっ壊す覚悟で。


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