見上げれば、青
(ぐしゃぐしゃだ)
ポケットに入ったままだったラムネは、もう粉々になってしまっていた。
原型を留めているのは数粒しか残っていない。
さっきあの屋上で、彼がくれたものだ。
「ねぇ、水野さん」
その声に持ち上げていた腕を下ろし、寝返りをうってパーテーションの隙間を見る。
ずっと背中を向けていた鳴海くんは、いつの間にかこちらを見ていた。
――なんて顔してんのって思った。
なんでそんなに情けない顔してるのって思った。
眉を下げて、歯を食いしばって。
なんで鳴海くんがそんな、何かを堪えるような顔をしているんだ。
「水野さん」
もう一度、そう言う。
彼の表情を見てると、何だか涙が出そうになった。
「俺は水野さんが、好きだよ。だから、一人じゃないよ。」
真っ黒の瞳を向けて、情けない顔をして私にそう言う。
「一緒に青空の下で、ラムネ食べよう。光合成しながら」
そしたらきっと、元気になれるから。
って目尻を下げた鳴海くんの、その澄んだ声が身体に染み入る。
こんな言葉を掛けてくれる人が、この世界にいたんだ。
目の前が涙で滲んでくる。
嬉しさで、涙が出てきた。
私はずっと待っていたのだ。
誰でもいいから、自分を見てくれる人を。
水野あおいという人間を、認めてくれる人を。
本当に、本当に、待ち望んでいたのだ。