見上げれば、青
「ラムネ、いる?」
どれくらいの時間、そうしていたのかは分からない。
私が思考の奥底に沈んでいたのは、かなりの時間だったかもしれない。
でも、目の前の鳴海くんは変わった様子はない。
景色に何の変化もない。
だからたぶん、時間はそんなに経っていないんだろうけど。
もうそんなことを考えるのでさえ、嫌になってしまった。
何も、考えたくない。
「ラムネ、いる?」
鳴海くんはもう一度同じ言葉を繰り返して、私の方に右手を差し出した。
その手の平には小さな袋が載せられている。
そのパッケージは、今私たちの頭上に広がる青空と同じ色をしていた。
先程の言葉からしてそれはラムネ菓子のようだけれど、それがどこから登場したのかは分からない。
昼食は食べてないけどお腹は空いていないし、この灼熱地獄の中、ラムネを食べる気になんてなれない。
「…いらなっ、」
言っている途中なのに、鳴海くんは私の腕を掴んで無理やり“空色”を右手に握らせた。
そしてすぐに私と距離を取るものだから、返したくても返せない。
この様子からすると、返すと言っても受け取ってはくれないんだろうけど。
かなり強引に、ラムネをもらった。